海外
一九七〇年代の終わり頃、『ファミリー・ライフ』の主人公である八歳の少年アジェは、インドのデリーから一家で米国へ移り住む。兄は猛勉強の末、入学を希望する理科高校の試験に見事合格。だが喜びもつかの間、事故で脳に損傷を受け、意思の疎通もままなら…
リチャード・パワーズの『オーバーストーリー』を読みながら取ったメモを置いておこうと思う。 オーバーストーリー 作者:リチャード パワーズ 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/10/30 メディア: 単行本 ごくまれに自分の感想や気になった書いてあるけれ…
Emma Cline の “What Can You Do with a General” を The New Yorker のオンライン版で読んだ。クリスマスイブの前日、裕福な暮らしを送る夫婦、 John と Linda のもとに子供たちが帰ってくる。三十代だがまだ母親に精神的に頼っている Sam、無給のインター…
村上春樹の “Cream” の英訳を newyorker.com で読んだ。訳者は Philip Gabriel、原典は『文學界』2018年7月号掲載の「クリーム」のようだが、こちらにはまだ当たれていない。 文學界2018年7月号 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2018/06/07 メディア: 雑…
Salvatore Scivona の “Do Not Stop” を The New Yorker(Web)で読んだ。海兵隊員でティーンエイジャーの Vollie は、沖縄の基地からベトナム戦争に派兵され、輸送車を運転する任務につく。あるとき彼の立ち寄ったケサンの基地が、北ベトナム軍の襲撃にあう…
The New Yorker に載った Taymour Soomro の "Pholosophy of the Foot" を読んだ。この作者が発表する初めての作品だ。パキスタンのカラチに母親と住んでいる男 Amer。死んだ父が遺してくれるはずだった邸宅がおじの手に渡ってしまい、母子ふたりはアパート…
イスラエルの作家アモス・オズ(Amos Oz)の "All Rivers" を The New Yorker で読んだ。1963年の作品で、ヘブライ語からの翻訳で、訳者は Philip Simpson。語り手の青年 Eliezer は28歳の予備役兵。趣味の切手収集の用件で偶然訪れたテルアビブで、5歳年上…
リチャード・パワーズの『舞踏会へ向かう三人の農夫』を読んだ。最近、河出文庫で復刊されたが、読んだのは前に刊行されたみすず書房版だ。 舞踏会へ向かう三人の農夫 上 (河出文庫) 作者: リチャード・パワーズ,柴田元幸 出版社/メーカー: 河出書房新社 発…
J・M・クッツェー『恥辱』を読んだ。 大学で文学を教える独身、離婚歴ありのデイヴィッド・ラウリーは、教え子に手を出して大学を追われ、田舎で小さな農園を営む娘のもとに身を寄せる。いままでの価値観とはまったくそぐわない生活に戸惑いつつも、近隣の動…
シャーウッド・アンダーソン『ワインズバーグ、オハイオ』の新訳が新潮文庫から出た。一九一九年に刊行されたこの作品は二十二の物語からなる連作短編で、新潮文庫の旧訳(橋本福夫訳)、講談社文芸文庫の小島信夫・浜本武雄訳など、これまでに何度も邦訳が…
増殖する「白墨人形」 1986年、イングランドの小さな町アンダーベリーの森で、頭部のない少女のバラバラ死体が発見される。町に住む12歳の少年エドと仲間たちは思わぬ形でこの事件と関わりをもつことになる。30年後、同じ町で教師をしているエドに、過去の事…
村上春樹のレナード愛 エルモア・レナードの「オンブレ」はメキシコにほど近いアメリカ南西部を舞台にしたウェスタン小説。語り手であり手記の書き手である《私》ことカール・アレンは、「男〔オンブレ〕」という異名をもつ謎めいた人物ジョン・ラッセルと同…
ジェフ・ヴァンダミアの『全滅領域』(酒井昭伸 訳,ハヤカワ文庫,2014年)が映画化されていて、Netflixで見られることに気づいた。監督は『エクス・マキナ』なアレックス・ガーランド。 www.netflix.com 原作は読んだ当初けっこう気に入った。そういう割に…
Joy Williams の 99 Stories of God を Kindle で読んだ。「神」というテーマを中心として99の掌編が収められ、明らかに宗教的なテーマをもつ編もあれば、一見何の関係もないものもある。すべての掌編に明確なオチがあるというわけではないが、「神」が登場…