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本をつい買ってしまう人の雑記です。

【ネタバレ】パワーズ『オーバーストーリー』を読んだメモ

リチャード・パワーズの『オーバーストーリー』を読みながら取ったメモを置いておこうと思う。

オーバーストーリー

オーバーストーリー

 

 ごくまれに自分の感想や気になった書いてあるけれど、基本的には何ページで何が起こるかがひたすらメモしてあるだけ。全てがネタバレそのものなので注意してください。

その段階ごとに書いているので、後から見て自明なことも「?」になってたりもする。自分用なのでわかりづらいし間違いも多いとは思うが、中身を整理したい人の役に立てばよいと思う。

個人的には、これは「啓示」の話として読んだ。ある日突然、自分たちのそばにいる樹木という存在に対して、目が開かれてしまった人たち。目覚めてしまった人は目覚める前に戻ることはできない。啓示を受けた人間どうしはつながり、啓示を受けていない世界と相対する。

 

 

【根】
 
ニコラス・ホーエル 13-36
ノルウェー系のヨルゲン、ジョン、フランク・シニア/ジュニア、ニコラス。五代に渡り撮られたアイオワの農場の栗の木の写真。
ミミ・マー 37-
  • 1948年にアメリカに移住した上海のイスラム教徒マー・シーシュインは父ショウインから絵巻物と三つの指輪を受け取っていた。ウィンストン・マーとなり移動式電話を開発。妻シャーロットとのあいだに三人の娘ミミ、カーメン、アミーリアをもうける。自分の植えた桑の木の下で自殺。長女のミミは絵巻物と「未来」を表す指輪を受け取る。
  • 自分の運命に自覚的なシーシュイン。熊から生き延びるエピソードで、今はまだ死ぬ時でないと知っているが如く振る舞う。一方で死ぬ時も自覚的。巻物に興味を持つのが、もっとも実務的なミミなのは面白い。ある種の神秘主義象徴主義がミミの選択に表れている。
  • タイムラプス写真 76

 

アダム・アピチ 68-89
  • 社交性の面で「発育遅滞」をかかえるアダムは、無理解で暴力的な父に育てられながらも虫の生態など人とは違った様々なものに高度な興味を持つが、科学コンテストで挫折。また姉が行方不明になる。以降は学校の成績は上がらない一方、他の生徒の課題を代行することで小遣いを稼ぐ日々を送るが、高校三年生の秋、ルービン・ラビノフスキ著『私たちの中にいる類人猿』に夢中になる。ラビノフスキ本人に手紙を書いたアダムは、大学受験の機会を手にする。
  • ニレの立ち枯れ病 75 →ホーエルの章との類似
  • 長女リー:ニレ、次女ジーン:トネリコ、長男エメット:鉄樹、次男アダム:カエデ
  • 1968年時点で五歳 68
  •  母の鎮静剤依存 82 病む母。無自覚な乳。本作のパターンか。
レイ・ブリクマンとドロシー・カザリー 90-
  • 弁護士のレイと速記者のカザリーは1974年、初めてのデートでマクベスのオーディションへ。法律婚を忌避するドロシーと、それでも一緒にいたいレイは一緒になっては別れてを繰り返す。一年目の結婚記念日、レイは毎年何か木を植えようとドロシーに提案する。
ダグラス・パブリチェク 102-
  • スタンフォード監獄実験に被験者として参加したダグラスは軍に入り、ベトナム戦争に従軍。飛行機の撃墜で大怪我を負って退役する。牧場の管理人をしていたあるとき大規模な国有林の伐採を知り、皆伐地に苗を植える仕事につく。
  • 木を植える、という伐採に抗うような作業だが、所詮いずれ木材にされる木であり産業の一部なのだという皮肉。だがダグラスは意に介していないように見える。愚かなまでの無頓着さにある種の聖性を見る?
ニーレイ・メータ 125-
  • インド出身の両親をもつニーレイは子供時代に木から落ちて身体が不自由に。しかしかねてから興味のあったコンピュータ化学の分野で力を伸ばしスタンフォードに入る。フリーウェアのゲーム作者としてその世界で名を馳せるが、自由だったインターネットの世界でも営利企業の囲い込みが始まる。ニーレイは世界を変える決意をする。
  • 贈与によって成り立つ、資源の奪い合いではない開放的ユートピアの喪失。インターネットは、競争だけで説明できない自然のあり方と似ている。
  • 世界をよくするためのプレーヤーとしての義務。 151
  • 宗教的、あるいは異星人によるアブダクションめいた啓示。151
パトリシア・ウェスターフォード 153-
  • 言語能力にハンディキャップを抱えたパトリシアは、少女時代(1950年代)から、農業改良普及事業に携わる父親の仕事について回って植物に関する知識を深め、大学生、さらに大学院生として森林科学を研究(1960年代)。博士になってから木が合図を送りあっている、という研究を発表するも学会からは冷たい反応を受ける。森に入りながら各地を転々とし、1980年代には北西へ向かい、カスケード山脈の原生林に入るようになる。やがて土地管理局の森林レンジャーとして働くようになったある日、森を訪れた研究者たちとの出会いによって自分の研究が再評価されていることを知り、彼らの一員となる。80年代の終わりから数十ヶ月をその研究所で過ごすことになり、研究基地の局長デニス・ウォードにプロポーズされる。
  • しかし、手元にはデータがない。彼女が持っているのは、小さな頃から落ち葉や枯れ枝で遊んで育った少女の勘でしかない。」165
  • 自殺を思いとどまるパトリシア:「何かがその手を止める。筋肉の中を、言葉よりも繊細な信号が走る。それは違う。一緒に来なさい。何も恐れることはない」174
  • 「彼女の私的な“自我”という粒子が、長い間引き離されていた仲間のもとに——圧倒的な緑の中へと——戻る。私はちょっと出掛けただけ、でも結局、日暮れまで外にいることにした、というのも、私が外だと思っていた場所は実は、中だったから」175
  • 他の編とのつながり:「彼らのせいはずっと前から地下深くでつながっている」178 放浪時代のパトリシアが立ち寄る場所は、マー父娘らのキャンプした町の近く。長女はやがて放火容疑でFBIが手配(?)。二千マイル東では、アイオワの農家生まれの「学生彫刻家」がセントラル・パークのヤマナラシのすぐ脇を通り過ぎる。三十年後にもう一度すぎるが、この長女との約束を守って自殺を思いとどまる。ちょうど同じ日、空有軍を除隊したダグラスが農場で馬小屋を建てている。セントポール郊外では知財弁護士例の家があり、ヤマナラシが生えている。やがて脳卒中で寝たきりに。シリコンバレーではにー例が父子でゲームの中のヤマナラシを作る。
  • 効率化、産業化、企画化すること、生だけを重視することへの反発。
  • 一見するとつながっていない、巨大な群のようなものが実は地下ではつながっていることの強調。
オリヴィア・ヴァンダーグリフ 196-
  • 1989年12月12日、学生結婚した相手と正式に離婚したその日、大学生のオリヴィアは麻薬でトリップしてシャワーを浴びたあと感電死する。
  • イチョウに目もくれないオリヴィア
  • 一見木とほとんど関係を持たず、登場したとたん死んでしまう彼女が今後どうかかわってくるか?
  • 「本人たちを除いて、家に子供はいなかった」200 このうっすらしたユーモアは好き。
【幹】
 
刑務所の独房で机に向かう男 209-210
死んでいなかったオリヴィア、1990年になってから精霊の導きでオハイオからイリノイ州へ。助けを求める木からの信号を受信。 211-222
  • パトリシアの章での木々が信号を出す、という話とのつながり
  • オリヴィアにとっての啓示
それより何年も前、ずっと北西(222)で、レイと42歳を目前に控えたドロシーの夫妻は別れ話を、養子をとる相談をする。 222-226
オリヴィア、州間高速道路80号沿いのアイオワのサービスエリアから父に電話。さらに西?に向かう途中病んだ栗の木の側で作品を売って暮らすニコラス・ホーエル に出会う。オマハの美術館に出掛けている間に父が死んでから10年近くたっている。ニコラスは一緒に行きたいと思う。 222-241
本社勤務になった32歳のミミ・マー、オフィスから見える松の匂いを嗅ぐ。241-247
約四年で五万本植えた記念に酒をおごるダグラス、40歳前。247-50
ミミ、女に集会のことを教える。250-251
集会の四日前、ポートランドに迷い込んだダグラスは木の伐採を妨害。252-55
伐採された木を見るミミ。256
ヒット作を出したニーレイ、レッドウッドの木に会いに行き次の作品、『支配』に着手。257-266
ニックとオリヴィア、ホーエル家を引き払いカリフォルニアへ。ニックは自分がオマハに行った夜、両親と祖母がガス中毒で死んだ話をオリヴィアにする。266-73
ダグラス、裁判と奉仕活動の後、ミミと出会う。 274-79
木を植え忘れるブリンクマン夫妻 279-83
ニックとオリヴィア、レッドウッドを守る活動家たちに合流。283-92
結婚数年目のパトリシア、本を書く。292-301
『支配2』の開発中に電話でインタビューを受けるニーレイ。302-10
高速36号線を横断幕で妨害する、動物の扮装をした人物たち。 310-12
フォーチュナ大学のアダム。教授の死。院進学。新しい指導教官の勧めで、植物を守る活動家を研究対象に。活動家は嫌い。312-20
ミミとダグラス、伐採への抗議に加わり逮捕される。320-29
  • 「彼女は昔から、信念を持った人々が苦手だ。しかし、信念が嫌いな以上に、権力を持った人間たちの卑怯なやり方が大嫌いだ。」
  • 「今だ。二番目にいい時期。」324
夫レイ以外の男と関係を持つ44歳のドロシー。330-40
  • 「体を大事にしなさい。君は私のものなのだから。」という隠れたメッセージへの反発。 333
  • ストーンの論文「樹木に当事者適格はあるのか?」を読むレイ。 332
  • 所有されたくない女。マクベス夫人になぞらえられるドロシー。340
切り倒される木に絵を描くニックを撮影するオリヴィア。340-43
パトリシア、自著への反響と支払い額に驚く。344-347
木の上を占拠するニックとオリヴィア。347-362
  • 2人の呼称が見張り人とイチョウに変わる
  • ほぼニック視点。理想の女の子としての客体化では?
  • 木の上に生態系があるようすのすごさ
あちこちで抗議に参加し、木こりと競り合い、警察に排除されるダグラスやミミ。362-69
『マスタリー』6まで発売。ウェブの発達。母に詰め寄られ交際相手がいると嘘をつき、思わず机を叩いて骨折するニーレイ。370-75
パトリシアが専門家証人として出廷した裁判で伐採の差し止め命令。375-84
ニックとオリヴィアの樹上生活。384-97
  • 伐採作業員との議論。
  • 「今、目の前にあるものを見えなくさせる力--それが消える。」 395
  • 嵐のあとふたりを心配する作業員。397
ミミ、ダグラスら人間の鎖に対する、警察の薬剤による攻撃。397-406
パトリシアが証言した伐採の差し止め命令が無効になる。パトリシアは種子バンクを思いつく。406-10
仮想空間でのニーレイと父の対話。410-18
ミミ、解雇。418-23
アダム、木の上のニックとオリヴィアを訪ねる。仲間のマザーNとモーゼが殺される。ヘリの襲撃により木を下りる三人。424-38
アダムらの拘束と同じ頃、パトリシアが法人を立ち上げ、ニーレイは支配8の開発を企図。ドロシーは倒れたレイと病院へ。留置された三人は釈放され、倒された木を見る。438-42
ニックたちのもとを離れ大学に戻るアダム 442-46
オリヴィア、ニック、ダグラス、ミミらのいる「カスカディア自由生物区」に合流するアダム。コミュニティはFBIにより解体され、競り合いでミミとダグラスが負傷。 446-59
抗議の破壊工作を繰り返す5人だが、活動中の爆発事故でオリヴィアが死亡。459-71
 
【樹幹】
 
針葉樹林でテントで夜を明かす男(ニックか?) 475-76
一同、ポートランドで散開。477-78
切られたミマスの上で野宿するニコラス 478-79 
アダム、20年のあいだにアカデミアで頭角をあらわす。480-82
山小屋で働くニコラス 482-84
ミミに断られ「緑のオアシス」に行き着くダグラス 484-88
阿羅漢の巻き物を処分するミミ 488-494
レイを介護するドロシー 494-500
20年の経過 500-01
『支配8』の問題点 501-04
アダム、昔のスローガンを使った破壊活動を知る。504-06
Amazonを思わせる倉庫で働きながら街の壁に絵や詩を描いて暮らすニコラス 506-09
本を読み聞かせてもらい、庭を眺めるレイ。 509-12
  • 「私はにせものだ。私が何をやっても世界は変わらない。でも、私は遠いところからこの電動ベッドの枕元までやって来て、あなたの話し相手となり、あなたの心を変える」511
  • 訳注によると1999年12月。510
人里離れた町で、無人になる冬の間管理人をしながら手記を書いているダグラス、またも木のおかげで一命をとりとめる。514-17
  • 「まるで霊魂に操られているようにペンが走り、考えがまとまる。そしてが何かが光を放ち、あまりにも明白な真実が勝手に語りだす」515
  • 「あなたの/仕事は/まだ/終わっていない」517
種子バンクの活動を進めるパトリシア。夫デニスの死。 517-27
  • ブラジルでの採集活動 520-27
ドロシー、恋人との別れ。9.11。527-30
サンフランシスコでセラピーを仕事にしたミミ。 530-41
元の家を訪れ、作品を取り戻すニコラス。 541-46
ニーレイ、ゲームに現実的な環境モデルを導入することを提案し反対にあう。 546-52
  • 「いい物語は人を少し殺す」550
昔話を披露するダグラス。FBIが来て手記を押収、連行。553-57
レイとドロシー夫妻、『超簡単 樹木の見分け方』をきっかけに木への認識を深める。557-63
新しい本を書き上げるパトリシア。 563-67
2011年、ウォール街選挙運動のさなかにダグラスと再会する、妻子持ちのアダム。567-77
  • 「昔は若かった、そしてもっと怒りを抱えていた。別の生き物だった。あれも失敗した実験の一つ」576
  • 「怒り。時間の経過とともに消えることのない悲しみの過激な切っ先」577
行き詰まったニーレイ、栗の木とソローのメッセージを受け取る。577-80
ニーレイの居所の近くから送られた招待メッセージがパトリシアに届く。 580-84
アダム、FBIにより身柄を確保される(ダグラスが手引き)。 584-88
ニコラスが船に描いたかもしれないメッセージ。588-89
庭に栗の木があるのを訝しむドロシーとレイ。589-92
招待に応じてサンフランシスコに講演に来たパトリシア。592-95
拘留されたアダム。 596-97
ダグラスがアダムを売った経緯。 597-600
「ホーム・リペア」会合でのパトリシアの講演。 600-608
自宅拘禁中のアダムの前で、路上に描かれる木。 608-11
娘の姿と未来の森を庭に幻視するドロシーとレイ。611-14
木々に覆われたマンハッタンを幻視するアダム。 614-18
ミミとニーレイの見る前で自殺直前に至る壇上のパトリシア。 618-22
アダムの裁判。 622-23
ドロシーとレイ、庭に植物をはびこらせる。 623-26
アダムに懲役70年×2の判決。 626-28
 
【種子】
 
地球の歴史を1日に例えると。 632-33
テントのニック。 634-35
公園でアダムの判決に思いを馳せるミミ。 635-36
全てを記憶する不可視の超知能(ラーナー)たち。 636
独房でパトリシアによる樹木学入門の講座を聞くダグラス。636-37
ニュースを見たあと、警察署を検索するミミ。637-38
刑務所に行く前のアダム。639
独房で木を想うダグラス。脇腹にはしこり。639-41
超知能の開発を続けるニーレイ。 641-42
アルゴリズムに勧められるがままに動画を眺めるミミ、気球の仕組みを使った阿羅漢と木の動画を見る。ニコラスの仕業か。 642-45
枯れ木で作品を作るニコラス。645-47
公園のミミと少年。 647
ニーレイ、ネットとの決別を決意。647-48
ミミ、アダムの意図を慮る。648-49
アダム、妻との諍いを回想。649-50
ニーレイのアルゴリズムの自己複製。650-51
ミミ、ダグラスが取引で自分を救ったことを悟る。651-53
講座を聞きつづけるダグラス。おとずれる罪悪感。653-55
  • 「一体、何と言えばいいのか? 俺たちは頑張った、と言えばいい? 俺たちは阻止しようとした、と?」 654
ニックの作品作りを手伝う見知らぬ男。655-56
すべてを吸収しつづける超知能たち。656-57
刑務所に収監されるアダム。 657-59
  • 「言葉を話せるのは生物の中で自分たちだけだと信じたまま、人間が巨大な墓場へと向かう未来。」658
「川や森や山のように思考し始める」ニーレイの超知能。 659-60
裁判について知りアダムを擁護するレイ。レイの死。 661-63
夜が明けてもミッションドロレス公園におり警官に話しかけられるミミ。 663-66
ニコラスを手伝った男、翌日さらに大勢を連れてくる。巨大な「STILL」の文字を書く一同。次のプロジェクトを思うニコラス。666-68