本を高く積め

本をつい買ってしまう人の雑記です。

2016-01-01から1年間の記事一覧

エドワード・ケアリー『堆塵館』古屋美登里訳(東京創元社)

舞台は一八七五年、ロンドン郊外のフォーリッチンガムという架空の区。ごみと廃材の山が連なる広大な一帯があり、その奥にそびえる屋敷「堆塵館」には、ごみから財を築いたアイアマンガー一族が住んでいる――。エドワード・ケアリーの小説『堆塵館』の世界は…

カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』村上春樹訳(新潮文庫,2016年)

カーソン・マッカラーズの代表作には、男みたいな女たちがきまってでてくる。『結婚式のメンバー』の主人公、十二歳の少女フランキーの身長は現在約百七十センチ。彼女は十八歳までに自分が成長するペースを計算してショックを受ける。《もしこの成長をどこ…

ダニエル・アラルコン『夜、僕らは輪になって歩く』

ペルー系アメリカ人作家ダニエル・アラルコンの第二長編『夜、僕らは輪になって歩く』は、物語がぐいーっと思わぬ方向に向かうのがいい。たどりつく先に待つものが悲しいのもいい。 1980年代に活動していた知る人ぞ知る小劇団《ディシエンブレ》の中心メンバ…

スティーヴ・エリクソン『きみを夢みて』

アメリカの大統領選挙で史上初めて有色人種の候補が勝利した年。ロサンゼルス郊外に住む作家アレクサンダー・ノルドック(ザン)は、妻のヴィヴ、十二歳になる息子のパーカー、そしてエチオピアの孤児院から養子に迎えた四歳の娘シバと暮らしている。長らく…

レアード・ハント『優しい鬼』

ひとりの年老いた女が、少女のころをふりかえる。《むかしわたしは鬼の住む場所にくらしていた。わたしも鬼のひとりだった。》 米国インディアナ州の農家の娘に生まれたジニーは、十四歳で母親のまたいとこ、ライナス・ランカスターの求婚を受ける。彼は自分…